散歩市民 〈ミニ詩集〉

私は散歩市民

ベランダを数えて

室外機を追っかけて

店を渡って

私は散歩市民

窓を並べて

軒を結んで

角を待って

権利を行使しなくては

散歩が詩歌になる前に

権利を行使しなくては

散歩が思想になる前に

 

 

行ったこともない、

というか存在しない場所を

懐かしんでしくしくやるような、

そういう時刻 人によって違うよね

私は午後 というか今

 

 

友達同士で改まった質問をしあうのに心底あこがれて

東京にしかない汚い部屋

フリーターしか入れない喫茶店

茶店でしか流れない時間

惰眠がつくるファッション

都会にしかない自然、

森は森だけど、それ以外は予定調和のテキストで。

具体的な自然は東京にしかなくて、目黒川沿いにしかなくて、2010年のYouTubeにしかなくて。

北海道にしかない本物もあれば、物産展にしかない本物もある。

正直物産展の試食のが美味しい。

 

 

部屋が端から詩になっていくのは

もちろん部屋が詩的だから

部屋が詩的ならば生活は、生活はどうなる

生活は叙情に成り下がり、叙情は訳無く消耗され、

車窓から大自然を眺め、秘境の温泉に浸かり、絵画を見てへえと思う

「音楽」と言うのが恥ずかしいのは、

もちろん音楽が恥ずかしいものだから

手紙を書いたり読んだり、見えない涙を想像するしかないじれったさ

違うイヤホンで同じ曲を聴く難しさ

今時LPなんか出すバンドを聴いてる奴は自分の事しか好きになれないのに

結局幸せになってて嫌い

 

 

西海岸にも変態は住む

サーフボードがキモい

ニット帽が暑くるしい

レコードが煩わしい

逮捕だ逮捕、訴訟だ訴訟

無理の国、さよならのビーチ

夏だからってキャンプばかりしてごめんなさいの海

 

 

舌がしびれて、何も意味を感じない

意味障害

このままだと危ない

感じるな、考えろ

でも気にするな、無闇にゆけ

ちょっとそこまで泳ぎにいこう

泳いで泳いで、潜って潜って、日付変更線を書きかえにいこう

少しならばれないよ!