黄色い木 〈短歌〉

「黄色い木」の反対は「黄色い木」「色白い」の反対は「色白くない」

 

エロ本がなくなったコンビニの棚 うんこドリルを置くのとかどう?

 

キンモクセイキンモクセイってうるさいな、キンモクセイの匂い知らない

 

全日本ショートカット協会会長 大幣切って書類送検

 

朧げに一時半 地図帳広げ「卍」のところに〇付けていく

 

薔薇、葡萄 画数多いは女ゆえ 酸いも甘いも 老いもエモいも

 

このことを、寝起きで鏡を見ることを事実上の切腹とします。

 

君も僕も両方いる地球は全惑星から嫉妬を買うのだ

 

ゲイジュツカ 一番嫌いなタイプだわ すぐに死ぬしすぐ生き返るし

 

森永のキャラメルの箱 ライターを置くとキャメルの箱に見える、と

 

このホクロ、こういうの好き わりあいに 自分にあったら嫌だけれど

 

散歩市民 〈ミニ詩集〉

私は散歩市民

ベランダを数えて

室外機を追っかけて

店を渡って

私は散歩市民

窓を並べて

軒を結んで

角を待って

権利を行使しなくては

散歩が詩歌になる前に

権利を行使しなくては

散歩が思想になる前に

 

 

行ったこともない、

というか存在しない場所を

懐かしんでしくしくやるような、

そういう時刻 人によって違うよね

私は午後 というか今

 

 

友達同士で改まった質問をしあうのに心底あこがれて

東京にしかない汚い部屋

フリーターしか入れない喫茶店

茶店でしか流れない時間

惰眠がつくるファッション

都会にしかない自然、

森は森だけど、それ以外は予定調和のテキストで。

具体的な自然は東京にしかなくて、目黒川沿いにしかなくて、2010年のYouTubeにしかなくて。

北海道にしかない本物もあれば、物産展にしかない本物もある。

正直物産展の試食のが美味しい。

 

 

部屋が端から詩になっていくのは

もちろん部屋が詩的だから

部屋が詩的ならば生活は、生活はどうなる

生活は叙情に成り下がり、叙情は訳無く消耗され、

車窓から大自然を眺め、秘境の温泉に浸かり、絵画を見てへえと思う

「音楽」と言うのが恥ずかしいのは、

もちろん音楽が恥ずかしいものだから

手紙を書いたり読んだり、見えない涙を想像するしかないじれったさ

違うイヤホンで同じ曲を聴く難しさ

今時LPなんか出すバンドを聴いてる奴は自分の事しか好きになれないのに

結局幸せになってて嫌い

 

 

西海岸にも変態は住む

サーフボードがキモい

ニット帽が暑くるしい

レコードが煩わしい

逮捕だ逮捕、訴訟だ訴訟

無理の国、さよならのビーチ

夏だからってキャンプばかりしてごめんなさいの海

 

 

舌がしびれて、何も意味を感じない

意味障害

このままだと危ない

感じるな、考えろ

でも気にするな、無闇にゆけ

ちょっとそこまで泳ぎにいこう

泳いで泳いで、潜って潜って、日付変更線を書きかえにいこう

少しならばれないよ!

 

 

 

 

頭が割れたら! 〈ミニ詩集〉

頭が割れたら何が出てくるかしら

蝶々だったら普通だし

お金だったら何を買おう

何も出てこなかったら飲み会で話せるな

頭が割れたら 頭が割れたら

割れても彼には黙っておこう

 

 

オレンジ

洒落たマイラバ

ヴィンテージカラー

黄色からオレンジまでの甘い水分を

すべて集めて実るは弩級の果実!

オレンジ

古いステンカラー

スタイリッシュカラー

鮮やかだけどかびくさい円盤

二つに割ったら中身は強烈!

 

 

金の屏風をなぎ倒すなぎ倒す

次から次へ

なぎ倒すなぎ倒す

見つかる前に

なぎ倒すのに夢中で気づかなかった、

屏風が延々連なるここはどこだ?

海じゃない 寺じゃない ホテルじゃない

なんだ、月が出てるじゃない

もう夜、ラッキー

寝るまでは夜 全員寝ろ ざまあみろ!

春よ 〈ミニ詩集〉

春よ、来い。早めに来い。

時間守れ。もう既にだいぶ遅れている。早く来い。

晴れろ。

桜、咲け。ふきのとう、芽吹け。つくし、伸びろ。タンポポ、盛れ。

お前らが頼みの、綱。物的、証拠。

 

 

毎日この時間、"hey baby"みたいな発音で「ゲロ吐きそう」って言ってる。ふふ

 

 

虚空にツッコミいれてて草。草通り越して薔薇。薔薇伝って鬱。鬱越えて春。すーごい鬱。長い春。行方をうかがってみる。飯も食う。オンラインにも四季あるってマ???

週末だからって別に生活はつづくよどこまでも。別に。別々に。別々々に。

 

 

慕いの行がゆきすぎて

出家も辞さない今日この頃、

指折りだけでは飽き足らず

砂の粒を数える始末

恋は盲目とは省き申したもので。

恋は盲目、難聴、動脈硬化、満身創痍の重篤です。臨終マジか。

 

 

海岸レコードの声がアイスティーの氷とおなじ形状で聞えて、

私あなたと、80年代を生きちゃった。

こんなことができるなら。

 

 

雨季の曲線、そのままジェットコースターにして十一月へ。

来るな八月、ねえ九月。

日のべの利かない暦を渡って。